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年収700万円で住宅ローン5000万円を組んでも大丈夫?返済の安全性を考える

執筆者

AFP(日本FP協会認定)
住宅ローンアドバイザー

将来の幸せを守るライフエージェント
つくば店店長
黒田 恭史 が執筆しました。

初めてマイホーム購入を検討している方にとって、「年収700万円で住宅ローン5000万円を組んでも大丈夫か?」は大きな不安ですよね。結論から言えば、可能ではあるものの慎重な計画と余裕を持った返済計画が必要です。年収に対して5000万円ものローンを抱えると家計への負担も大きくなります。本記事では、返済の安全性に焦点を当て、収入と支出のバランスや無理のない返済ライン、家計への影響、そして安全に返済を進めるポイントまで、親しみやすいトーンで解説します。ぜひ参考にしてみてください。


年収700万円の手取り額と毎月の生活イメージ

年収700万円の世帯の手取り額は、年間で約525万~595万円程度とされています。月々に換算すると手取り月収はおおよそ44万~50万円ほどになります。この幅があるのは、扶養家族の有無や社会保険料・税金の額によって差が出るためです。平均的には手取り月収約45万円前後と考えておくとよいでしょう。
では、その手取り月収でどのような生活になるのでしょうか?単身の場合、毎月の生活費を引いた残りから約9万円程度を貯蓄に回せる計算になります。一方、ご夫婦とお子さん2人の4人家族の場合は、食費や教育費など出費が増えるため単身者ほどの余裕は生まれにくく、「まとまった貯蓄は難しいかもしれない」と言われています。お子さんの塾代や習い事など成長に伴い支出もかさむため、手取り月収45万円の中でやりくりしても貯蓄余力が少なくなる傾向があります。
さらに、この年収帯の4人家族では持ち家率が約87.7%にも達するとの統計もあります。多くのご家庭がマイホームを所有し住宅ローンを抱えている一方、その返済が家計の負担にもなっているのが現状です。つまり年収700万円クラスの家計でも、住宅ローン返済が生活費や貯蓄に与える影響は大きいのです。

5000万円の住宅ローンを借りたら毎月の返済額はいくら?

では実際に5000万円の住宅ローンを組んだ場合、毎月どの程度の返済額になるでしょうか。返済額は金利タイプや返済期間によって変わりますが、ここでは一例として「全期間固定金利・年1.5%・借入期間35年・ボーナス払いなし」という条件で見てみましょう。この場合、毎月の返済額は約15万3,000円となり、総返済額は約6,429万円(利息約1,429万円)に上ります。月15万円超というと手取り45万円に対して3分の1以上を住宅ローン返済が占める計算です。
金利タイプによる違いも考えてみましょう。現在の日本の住宅ローン金利は変動金利で年0.5%前後、固定金利(フラット35など)で年1%台が一つの目安です。変動金利を選べば当初の返済額は低く抑えられ(例えば0.5%なら毎月約12~13万円程度)ますが、将来金利が上昇すれば返済額も増えるリスクがあります。一方、固定金利は当初の返済額は高め(毎月15万円程度)が安心感は高いでしょう。返済期間についても、25年なら毎月約17.4万円、30年なら約14.7万円、35年なら約12.7万円という試算もあります。期間を延ばすほど月々は楽になりますが、その分総利息額は増えてしまいます(35年返済は25年返済より利息総額が約100万円多い)。
このように毎月の返済額は15万円前後になると見込まれ、家計へのインパクトは小さくありません。「毎月これだけ返していけるだろうか?」と不安になるかもしれませんが、次に紹介する返済負担率の考え方で適切なラインを確認してみましょう。

返済負担率とは?安全と言われる目安を知ろう

返済負担率とは、年収に占める住宅ローンなど借入返済額の割合のことです。一般にこの返済負担率が低いほど家計にゆとりがあり、安全な返済ができると判断されます。金融機関が住宅ローンを審査する際も、この負担率を重視しており、多くの場合審査基準は返済負担率30~35%以内に設定されています(銀行によって異なります)。しかし家計を無理なく維持するには、返済負担率は「20~25%以内」に収めるのがよいとされています。
具体的に見てみましょう。年収700万円のご家庭では、年間返済額が140万円であれば負担率20%、175万円で25%になります。月額にすると約11.6万円(月収の約25%)が安全ラインで、それ以上になると生活費や貯蓄へのしわ寄せが出やすくなるというイメージです。先ほど試算した月返済15.3万円(年間約183万円)は、年収700万円に対して負担率約26.2%となり、安全とされる25%を少し超えてしまいます。つまり5000万円のローンは年収700万円に対し、ややハイペースな返済負担になることが分かります。
実際、国の調査でも多くの借り手は返済負担率を20%前後に抑えているとのデータがあります(住宅金融支援機構調査では平均負担率約19%との報告も)。無理のない返済のためには、できれば負担率25%以内、可能なら20%台前半に収まる返済額に設定することが望ましいでしょう。

「借りられる額」と「返せる額」は違う!無理のない借入ラインとは

住宅ローンを考えるとき、「自分はいくらまで借りられるか」より「いくらまでなら無理なく返せるか」を重視すべきだと言われます。年収700万円の人が金融機関から借りられる金額の目安は、年収の何倍まで融資可能か(年収倍率)という考え方で推測できます。一般的に銀行が融資する上限は年収の約8倍ほど、適正と言われる借入額は年収の5~6倍程度が目安です。年収700万円なら、理論上の借入上限は約5600万円、無理なく返済できる適正額は3500~4200万円程度という計算になります。
つまり5000万円のローンは「借りようと思えば借りられる範囲」ではあるものの、適正レンジ(5~6倍)をかなり上回っていることが分かります。銀行からは審査上OKが出ても、実際の家計では苦しくなる可能性が高いのです。「借りられる額=返せる額」ではない点に注意し、自分の収入で無理なく返せるラインをシミュレーションして借入額を決めることが大切です。
また、借入可能額ギリギリまで借りてしまうと、金利上昇や収入減少など予期せぬ事態に対応できなくなるリスクがあります。たとえばボーナスカットや失業、病気などで収入が落ちた場合でも、借金は待ってくれません。金融機関の上限いっぱいではなく、生活にゆとりを持てる返済額にとどめておくのが安全策と言えるでしょう。

住宅ローンが家計に与える影響:生活費・教育費・老後資金の視点

住宅ローンの返済額が増えれば、その分生活費や他の資金目的に充てられるお金が削られることになります。特に注意したいのは、お子さんの教育資金やご自身たちの老後資金への影響です。住宅ローン以外にも、人生には将来大きな支出イベントが控えていますので、それらとのバランスを考えなくてはなりません。
例えば、今まで支払っていた家賃より住宅ローン返済額が高くなる場合、その差額は生活費から捻出する必要があります。無理に切り詰める生活が続くと、「家を買ったせいで生活が苦しい…ローンなんて組まなければよかった」と後悔する可能性もあります。マイホームを持つ喜びと引き換えに日々の暮らしがギリギリでは、本末転倒ですよね。
また、住宅ローン返済期間中にお子さんが成長すれば、中学・高校・大学と教育費のピークがやってきます。特に大学進学時には入学金や学費でまとまった支出が必要です。住宅ローンの負担が大きすぎると、教育費を捻出するために貯金を切り崩したり、最悪場合によっては借金に頼ることにもなりかねません。あるファイナンシャルプランナーの相談ケースでは、年収700万円台の50代夫婦が住宅ローンと子ども3人の教育費、老後資金の3つに追われて「貯蓄ゼロ」の危機に陥ったという例も報告されています。このケースでは、住宅ローン完済が夫70歳という計画で、繰上返済や老後準備の必要性が指摘されていました。教育費・老後資金・住宅ローン返済という“三大支出”を同時進行で準備するのは非常に大変であり、収入に見合ったバランスが求められることが分かります。
さらに別の実例では、50代で年収約700万円(夫600万+妻パート100万)のご家庭が、毎月16万円の住宅ローン返済と月34万円の生活費で家計がカツカツになり、貯蓄がほとんどできていないという状況もあります。お子さんの大学進学を控え、退職金や再雇用で何とか老後に備えようとしても「老後資金どころではない」という厳しい状態です。このように、住宅ローンの負担が重いと将来の備えにまで影響が及ぶことを認識しておきましょう。
ポイントは、住宅ローン返済に家計を圧迫されすぎないよう、教育費や老後資金も見据えた長期的なマネープランを立てることです。ライフイベント表やシミュレーションを活用して、「〇年後に教育費でこれくらい必要」「老後までにこれくらい貯めたい」という計画と、住宅ローン返済計画を両立させる視点が欠かせません。住宅ローンにばかり気を取られて他の貯蓄がゼロにならないよう、バランスの取れた家計管理を心がけましょう。

返済を安全に進めるためのポイント

住宅ローン5000万円という大きな借入を安全に返済していくために、以下のポイントを押さえておきましょう。少し工夫や備えをするだけで、返済のリスクを減らし安心感を高めることができます。

  • 頭金をできるだけ用意する(自己資金の投入)
    購入価格に対して20%程度の頭金を入れるのが一つの目安です。頭金を増やせばその分借入額が減り、毎月返済額も軽減されます。金融機関の多くは物件価格の80%程度を融資上限としていますので、頭金2割(自己資金20%)以上あるとローン審査上も有利になります。無理のない返済のためにも、可能な範囲でまとまった自己資金を準備しましょう。
  • 団体信用生命保険(団信)に加入する
    住宅ローン契約者が万一のこと(死亡や高度障害)に見舞われた場合、保険金でローン残高がゼロになるのが団信です。民間ローンでは加入がほぼ必須ですが、内容をよく理解しておくことが大切です。団信のおかげで、たとえ主債務者に不幸があっても残された家族に住宅ローンという負債を残さずに済みます。ガンや三大疾病保障付きなど手厚いタイプもありますので、安心料だと思って適切な保障を選びましょう。
  • 計画的に繰上返済を活用する
    ボーナスや予備資金に余裕ができたときは、繰上返済(ローンの一部前倒し返済)を検討しましょう。繰上返済を行うと元本が減るため、支払う利息総額を減らしたり返済期間を短縮したりできます。ただし、一度繰上返済すると取り消しはできず手元資金が減ってしまうため、実行の際は生活防衛資金を残した上で行うことが大事です。無理なく続けられる範囲で活用し、「定年までに完済」を目標に計画的に返済を進めると安心です。
  • ボーナス返済は慎重に考える
    ローン契約時にボーナス併用返済を設定すると、毎月返済額を抑えられるメリットがあります。しかし、ボーナス払いに頼った計画にはリスクも潜みます。もし将来ボーナスが大幅減額・支給なしとなっても、契約上決められたボーナス返済額は変更できず支払い義務が続きます。「ボーナスが出なくなったらどう工面するか」まで想定しておくべきという指摘もあるほどです。また、ボーナスをローンに充てることで教育費など他の出費に使えなくなる恐れもあります。ボーナス返済を利用する場合は、その分ボーナス頼みの家計にならないよう余裕資金で充当する、あるいはボーナス返済なしでも返済が成り立つ借入額にしておくことが安全策と言えます。
  • 住宅ローン減税など公的制度を活用する
    住宅ローンを借りた人には、一定要件のもとで住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)が受けられます。借入残高の0.7%〜1%が所得税などから控除される制度で、毎年数十万円が戻ってくる可能性があります。例えば借入残高5000万円(長期優良住宅なら上限)なら最大年間40万円の控除を受けられるケースもあります。ローン減税の分を貯蓄や繰上返済に回すなど、有効に活用しましょう。ただし控除期間や上限額には限りがあるため、過信は禁物です。

以上のようなポイントを押さえ、「備えあれば憂いなし」の精神で住宅ローンに臨むことが大切です。大きな借入ですが、適切な準備と計画次第でリスクを減らし、安全に返済を続けられるでしょう。

専門家(ファイナンシャルプランナー)への相談も活用しよう

住宅ローンと家計全体のバランスに不安がある場合は、ファイナンシャルプランナー(FP)などお金のプロに相談することも検討してください。FPは中立的な立場で予算や資金計画のアドバイスをしてくれる心強い存在です。現在の金利情勢で固定と変動どちらを選ぶべきかなども、プロに相談すればより具体的にわかるでしょう。第三者の視点でシミュレーションしてもらうことで、「本当に5000万円借りて大丈夫か?」という問いにも客観的な答えが得られるはずです。
例えば住宅購入支援サービスでは、オンラインで無料相談に乗ってくれたり、資金シミュレーションを提供してくれる窓口もあります。ローンの組み方だけでなく、家計全体の見直しや保険のチェック、将来のライフプランまで総合的に相談できます。「家を購入する前に一度プロに相談して、自分に合った購入の仕方を把握することで、後悔なく検討を進められる」という助言もあります。初めてのマイホームだからこそ、遠慮せず専門家の知恵を借りてみましょう。
相談の際には、家計簿や収支の情報、将来の予定(お子さんの進学予定やご自身の定年時期など)を整理して伝えると的確なアドバイスが得られます。住宅ローンは人生で最大の買い物とも言われますので、プロの意見も取り入れつつ、納得のいく計画を練ってください。

まとめ:収入に見合った計画で「大丈夫な」住宅ローンに

年収700万円で住宅ローン5000万円を組むこと自体は不可能ではありません。ただ、「大丈夫かどうか」はその人の家計状況や将来設計次第と言えるでしょう。ここまで見てきたように、手取り月収に対する返済額の割合(返済負担率)が高すぎると、生活費や教育・老後資金にしわ寄せがいき、家計が苦しくなるリスクが高まります。借入額そのものを抑える工夫や頭金の準備、繰上返済の活用、保険や公的制度の利用など、安全策を講じて初めて「大丈夫」と胸を張って言えるプランになるのです。
ぜひ一度、ご自身の家計で無理なく返せるラインをシミュレーションしてみてください。毎月いくらまでなら返済に充てられ、将来の貯蓄目標と両立できるかを具体的に数字で確認することが大切です。その上で5000万円のローンが重すぎるようであれば、物件予算を見直したり、頭金を増やしたり、共働き収入を織り込む(収入合算やペアローン)といった対策も検討しましょう。反対に計画上問題なく返せそうであれば、過度に心配しすぎる必要はありません。念願のマイホームを手に入れつつ、将来にわたり家計が破綻しない範囲で計画を立てていけば良いのです。
人生で一番大きな買い物だからこそ、「無理のない返済」を最優先に考えることが幸福なマイホーム生活への近道です。安全な返済計画で、ぜひ夢のマイホームを実現してくださいね。

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つくば店店長 黒田 恭史

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元々、夫婦で賃貸物件に住んでいてそこまで「マイホーム」の事は近々で考えてはいませんでした。そんな中、住んでいる部屋から一部水漏れが発生!... 続きを読む

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